日本文化は大陸文化を抜きにしては語れないが、「中国書法を基盤とする日本書道史研究」「中国北方系青銅器」も同様。「東アジアにおける言語接触の研究」はその言語編ともいえる。「東洋日本美術史と現場」は東北大学の有賀教授、「日本美術史の杜」は早稲田大学の村重・星山両教授の退官にあたって編まれた、教え子や関係者の研究実績。ともに東洋・日本美術史研究。
およそ千年にわたり多くの専門家が論じてきた源氏物語。それだけに一般には研究書から読み始めるのは難しい。まずは物語全体を概念的に捉えるために工夫された「初学び源氏物語」、「源氏物語の始発」を入口に、「重層する歴史の諸相」「王朝歴史物語の方法と享受」、人情としての交感にスポットをあてた「源氏物語とその展開」など、各論へ読み進まれることを望みたい。
「伊勢物語版本集成」は江戸のベストセラーだった主要版本を総合的に復刻掲載したもので、過去に忘れ去られた貴重な研究実態も垣間見える。「伊勢物語注釈稿」は源氏物語研究の第一人者が手掛けた伊勢の注釈稿。なお、伊勢物語研究にとって欠かすことの出来ない「虚構」と「享受」の考察については、「シリーズで探す」→「伊勢物語成立と享受シリーズ」を参照されたい。
「芭蕉、その後」「芭蕉と素堂」は、江戸前期の俳諧師「芭蕉」とその周辺、その後の文化的流れをとらえた二冊。「江戸の漢文脈文化」は、芭蕉のみならず江戸文化の理解のためには漢文が欠かせないとの思いから、諸分野の研究者が専門的立場でアプローチした本。「江戸文化からの架橋」は、他分野とのかけはしの意味。いわゆる“江戸文学における隣接諸学”とも言える。